あなたはどれ!?高性能イヤフォン final Bシリーズの紹介
マツコの知らない世界でも話題沸騰の5000円で手に入る高性能イヤホン「E3000」を提供するfinalから、超個性的なシリーズが出ました final Bシリーズ
E3000が万人受けするようなスペックを狙ったのに対し、Bシリーズはそれぞれ異なる音作りのコンセプトで開発がされており、どの機種も超個性的な仕上がりになっています。
だからこそ、
- 「すべて良いことしか書いていないけど、結局、自分に合った機種はどれ?」
といった悩みもあると思います。
この記事では、調律師で音のプロである私が、各機種はどんな音源を得意とするか、または苦手なのかをレビューします。(以下、あくまで個人的な感想です。そして、メーカーの説明とは、全く異なることを言っています。)
final B1/B2/B3 サマリー
Bシリーズは三種類。簡単なサマリーは以下のようになります。
製品名 | B1 | B2 | B3 |
---|---|---|---|
得意な音域 | 低音 | 高音 | 中音 |
音像 | 奥 | 手前 | 中程度 |
感度※ | 低い | 高い | 中程度 |
得意分野 | Fusion Pops |
クラシック |
クラシック(オケ) |
販売価格 | 約7万円 | 約3万円 | 約5万円 |
結論から言います。個人的には、それぞれの機種がどの音域を得意とするかが最も重要だと思います!
低音が得意なB1、中音が得意なB3、そして高音が得意なB2。
この個性によって、得意なジャンルが決まるといっても過言ではありません。
レビュー環境
今回は、PCからUSB-DACで出力しレビューしました。以下、環境を紹介します。
再生音源:
- ピアノ(スタンウェイ):クラウディオ・アラウ(pf) ショパン「ノクターン第13番」
- ピアノ(ベーゼンドルファー 1923年製):パウル・バドゥラ=スコダ(pf) ドビュッシー「沈める寺」
- ピアノ(ベヒシュタイン):ホルヘ・ボレット リスト「エステ荘の噴水」
- ピアノ(グロトリアン):イェルク・デームス ドビュッシー「沈める寺」
- ピアノ(シュタイングレーバー):シプリツァン・カツァリス バッハ「ピアノ協奏曲イ長調 BWV1055」
- ヴァイオリン:ギドン・クレーメル バッハ「パルティータ第3番 前奏曲」
- ヴァイオリン:古澤巌 マスネ「タイスの瞑想曲」
- 女性ヴォーカル:キャスリーン・バトル ヘンデル「オンブラマイフ」
- 男性ヴォーカル:フレッチョ・タリアヴィーニ プッチーニ《トスカ》「星は光りぬ」
- オーケストラ:セルジウ・チェリビダッケ ブルックナー「交響曲第9番」
- 女性ヴォーカル(Jazz):STACEY KENT RICHARD RODGERS “Shall we dance?”
- 男性ヴォーカル(Jazz):Mel Torme “All God’s Chillun Got Rhythm”
- フュージョン:Marcus Miller ”Power”
上から高音、中音、低音をカバーしているセットにしてみました。
B1 最も低音の再生能力に優れた機種
この低音は本当にすごいです!
エレキベースが主役の曲であるMarcus Millerの”Power”を全く歪むことなく再生しています。
エレべのオクターブ下をユニゾンしているシンセサイザーの音が明快です!
よくもまぁ、こんなに小さいイヤホンのドライバーから、人間の可聴範囲ギリギリの低い音が再生されるのだと感心しっぱなしでした。
このシンセの音をちゃんと再生できているのは、この3機種ではB1だけです。
ビシッ!と締まった低音はやっぱりカッコイイ!素直にそう思いました。
この低音は、ヘッドフォンすら凌駕します。
オーケストラでもチェロやコントラバスの動きがはっきりわかり、「ここは、こんな楽譜だったんだ」というような新たな気づきがあり楽しいです。
中低音の解像感はすごいの一言。
一方、高音は苦手のよう。
アコースティックなピアノやバイオリンの音色には、非常に高い「倍音」が重要になってくるのですが、何枚ものベール越しに聞いているように抜けが悪く、倍音がうまく再現できていない。
気の抜けたビールのようです。
ダイナミックレンジが狭いことも特徴であり、曲が盛り上がろうにも、イヤホンのほうがついていけない。
なんとも聞いていてフラストレーションがたまります。
B1は、JazzやPops、クラブミュージックのように低音の要素が含まれている音楽を聴く方、中でも、ベーシストのような「低音大好き!」な方に特にお勧めします!
B2 最も高音の再生能力に優れた機種
B1とは真逆で、高音の抜けが非常に良いです!
ピアノ、ヴァイオリンなどのアコースティックな楽器の音色を決めるのは倍音(非常に高い弦振動から発せられた音)だといっても過言ではありません。
B2だったら、「あ、このピアノはベヒシュタインだ」とピアノのメーカーさえ手に取るようにわかります(このようなヘッドフォンもなかなか無いです)。
ピアノの音色の雰囲気、質感、香りさえ表現可能です!
もう一つの特色は、音源が極めて近くに感じられる(音像が近い)ということ。
楽器と自分の間に隔てるものは何もなく、ダイレクトに音が飛んでくる感じがします。
サラウンディング的に響くシステムの器楽曲は「どこから音が出ているの?」と違和感がありますので、むしろ音源位置が特定されるのは好ましい。
「沈める寺」では、あまーく、かつ、透き通るピアニシモから、フォルテシモの「鉄骨が響いている」感まで、非常に高いレベルで楽器の特性を再現していました。
この高音もまた、ヘッドフォンを凌ぐすばらしさと言えましょう。
また、(Jazzなど電子的な音が入っていない、クラシックの)歌ものにも最適です。
今回準備した音源ですと、キャスリーン・バトルやフレッチョ・タリアヴィーニが「目の前に現れて、私のために演奏してくれた」という感覚に陥りました。
一方、低音は苦手です。
Jazzはどんな曲を聴いても、ベースが「ぺんぺん」とか「ぺしぺし」と言うように聞こえてしまいます。
B1ではあれほど聴いていて楽しかったMarcus Millerがなんともコミカルに聞こえてしまうほどです。
三味線かって。
それに反してピアノは無駄にゴージャスに響いてしまいます。
あの素晴らしきSTACEY KENTの「Shall We Dance?」のピアニスト David Newtonにも、肩をたたきながら「じぶん、出しゃばりすぎやで」とアドバイスしたくなるような、なんとも言えないアンバランス感が出てしまいました。
B2はクラシックの中でも器楽曲や歌を聴く方に断然おすすめです!9割ピアノ曲を聴く私はコレ!3万円で高級ヘッドフォンよりも素晴らしい高音が手に入ると思えば、どう転んでも幸せになります!
(追記)
配線にも差がありますが、B2はブラックケーブル、B1とB3はシルバーコートケーブルが使われています。B2はケーブルをシルバーコートケーブルに変更することによって、さらに高音の伸びを得ることができます。
幅広く音楽を楽しむのであればB2とブラックケーブルをお勧めしますが、やはり、私のようにピアノ(器楽曲)しか聴かない方はには、シルバーコートケーブルをお勧めします!
B3 最もバランスの良い機種
B1とB2の中間のようなスペックで、高音も低音もそつなく鳴らし、音源との距離も近く感じられる、最もバランスの良い機種だと思います。
ベース、ピアノ、ドラム、歌のそれぞれの掛け合いが重要なJazz、あらゆる音が混在するオーケストラなどに使用すると最も効果を発揮する機種だと思います。
事実、STACEY KENTやMel Tormeを聴いているときは、ベース、ピアノ、ヴォーカルの掛け合いを一番楽しめたのは、このB3です。
B2は高音が得意と言いましたが、バイオリンやピアノが演奏によっては「キシキシ」「キャンキャン」といったように聞こえてしまうことがありました。
「そんな演奏のアラなんてわからなくていいからとにかく音楽を楽しみたい」というなら、ピアノ、バイオリン、歌を聴く方にも安心しておすすめできます!
私は他にE4000を持っていますが、明らかにクリアさはB3の方が上。
となるとE5000と比較したくなるのですが、そのレビューはいつかやってみたいと思います!(E5000のほうが安いし)
B2は音楽を音楽として楽しむすべてのユーザーにお勧めできます!やっぱり音楽は、複数の旋律、リズムと旋律、または楽器同士の「対話」があってこそ面白いと思います。
ただし、家で聞く分にはヘッドフォンという選択肢もあります。(中古ならオーディオテクニカのATH-2000Xが約3万円で手に入ってしまう時代です)
B3はハイレゾのポータブルプレイヤーと組み合わせて、いつでもどこでも最高の音楽を、というところに強みがあるのかなと思います。
まとめ
これまでをまとめますと、
- 「私はPopsやクラブをよく聴き、特に低音が好きだ!」 → B1
- 「私は器楽曲が好きでほとんどクラシックだ!」 → B2
- 「私は幅広いジャンルをまんべんなく聴く!」 → B3
となります。
ぜひ、ご自身の好きなジャンルに合わせて試してみてくださいね。
最後まで読んでくれてありがとうございました!